基本的な分類と原因物質

一口に食中毒といっても、その原因物質は多種多様です。ただし、食中毒全体の発生件数や患者数から見ると、夏場に目立つ細菌性食中毒が、全体の9割近くを占めます。そのうえで、細菌性食中毒は感染型と毒素型に分類されるのが特徴です。
まず、細菌性食中毒の感染型には、腸炎ビブリオやサルモネラ菌、病原大腸菌などが原因物質として挙げられます。この中でもサルモネラ菌は、歴史的に古くから知られる食中毒菌です。原因飲食物としては、食肉やその加工品のほか、レバ刺し、鶏肉料理、鶏卵加工品などがあります。ただし、サルモネラ菌に感染したネズミやゴキブリなどが、調理器具や容器を汚染することで発生した事例も存在するのが実態です。
次に、毒素型の細菌性食中毒の原因物質としては、黄色ブドウ球菌が代表的なものでしょう。毒素型の食中毒は、菌そのものに毒性はないものの、菌が大量に増殖する際に発生する毒素によって、はじめて中毒が起こるのが一般的な傾向です。黄色ブドウ球菌は、自然界に広く分布しているもので、菌が増殖する際に出るエンテロトキシンが毒素となり、食中毒が引き起こされます。
なお、人間には化膿した傷口で多く見られ、傷のある指や手のひらに触れた飲食物を口にして、食中毒が発生するケースが目立ちます。学校で食べたお弁当のおにぎりや卵焼き、あるはイベントでの折詰料理や仕出し弁当、さらに洋菓子店で購入したシュークリームなどで、発生事例が報告されているようです。